谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜
「私たちは確かに、互いのことをなにも知らない。だから、互いを知って理解り合うのはこれからにはなるが……それでも、私はどうしても……」
大尉の頬が朱に染まっていた。それどころか、彼の耳までもが、真っ赤に色づいていた。
「……あなたを私の伴侶としたいのだ。
どうか……わかってほしい」
意を決して、彼はリリの薔薇色に輝く頬を、その大きな手のひらでそっと包んだ。
彼にとっては、どんなに敗色濃厚な海戦の最前線へ赴かねばならないときよりも勇気と度胸が試されるような気がした。
「どうか……あなたのこの可憐なくちびるで、私に『Ja』と応えてくれ……」
大尉の無骨な親指が、リリのくちびるをつーっとなぞる。
「私のことを『Kapten Granholm』ではなく、あなたの夫として『ビョルン』と呼んでくれ……」
リリの翠玉色の瞳を見つめる彼の琥珀色の瞳が、哀しいほどせつなげだ。
「そして、あなたのことを……
『Fröken Liljekonvalj』ではなく、私の妻として『リリ』と呼ばせてほしい……」