谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜
そのとき、リリはすっぽりとなにかに包み込まれた感覚がした。
すると、目の前に、グランホルム大尉の厚い胸板が来た。
……どうして?
私は今……大尉の腕の中に、閉じ込められている?
「リリコンヴァーリェ嬢、あなたはまだそんなふうに私のことを思っているのか?」
頬が当たる、彼の胸から聞こえてきた。
舞踏会で踊ったダンスのときですら、こんなに近くからは聞こえてこなかった。
リリの心臓が早鐘を打つかのごとく、高鳴った。
……大尉に、聞こえてしまうかもしれない。
だが、その大尉の胸からも、早鐘のような慌ただしい心音が聞こえてきた。
……えっ?まさか、大尉も……
そう思った瞬間、リリのくちびるに、ふわりとやわらかなものが落ちてきた。
大尉の少し厚めのくちびるだった。
彼女にとっては、初めてのくちづけだ。
……グランホルム大尉が、こんなことをするなんて……⁉︎
くちびるが離れたあと、リリはびっくりして彼を見上げた。