谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜
「あぁ……やはり、あなたは……」
グランホルム大尉の端正な顔が、絶望のあまり大きく歪む。
「だから……あなたも一緒に行ってくださる?」
リリはこともなげに平然と頼んだ。
だが、そのうちにだんだんと、してやったり、と彼女の口元が綻んでいく。
「……えっ⁉︎」
彼はワケがわからず、アーモンドの大きな瞳を何度も瞬かせた。
リリは今までさんざん、大尉の「不可解」な言動に、哀しくていたたまれない思いを味わわされてきたのだ。
このくらい、赦されるだろう。
「修道院に伺って、私が改宗せずにこれからもマリア様を信仰し続けることができるようになったことをNunnaに報告しなければならないの。
できれば、あなたからも私が修道女になれなくなった『理由』を説明していただきたいから、ご足労だけれども、ご同行していただけないかしら?
それから、カールスクルーナのカトリック教会への紹介状もお願いしなくてはならな……」
みなまで言い切ることなく、いきなりリリは大尉に抱き寄せられた。
彼の胸板に、彼女の頬がとんっ、と当たる。
「もちろん行くよ。私が責任を持って、あなたを渡せないことを彼らに説明し、そしてきちんと詫びよう」
彼の心臓の鼓動が、どくどくどく…と聞こえてきた。先刻よりもずっと早い。
「あぁ……リリコンヴァーリェ嬢……
あなたは『Ja』と言ってくれるんだね……?
私の妻になってくれるんだね……?」
大尉はしみじみと噛み締めるように言いながら、リリをその腕に閉じ込め、かき抱いた。
……もう、決して離さない、とでもいうように。