谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜
「あら、あなたは私を『リリ』と呼びたいのではなかったの?……ビョルン」
リリは大尉の腕の中から彼を見上げた。
彼女の翠玉色の瞳は、すっかりいたずらっ子のそれになっていた。
「あぁ、そうだったな……リリ」
まるでいたずらがバレた少年のように、大尉は気まずそうにはにかんだ。
今日は彼の初めて見る顔ばかりだ、とリリは思って、ふふふ…と笑った。
そして、リリもまた、今まで彼に見せていた「貴族令嬢並みの教育を施された淑女」ではない、家族や親しい友人だけに見せる「ありのままのリリ」になっていた。
きっとお互い、これからいろんな「知らない顔」を見せ合うことになるのであろう。
リリも、ビョルンも……
二人はまだ「知り合った」ばかりだ。