病んでる僕と最強の勇者たち
「賢者様、起こしてしまってすみません。

でも緊急事態が起きてしまったんです」



シェーラはそう言うと、さらに僕に顔を近づけ話を続けた。



「私の姉のルエラが闇の魔王、ダーギルの手下にさらわれたんです。

ダーギルは私たちの国、ベルミータ国を闇の世界に変えてしまった魔法使いです。

ダーギルのせいで私たちの世界から日の光が奪われました。

ダーギルの闇の魔法はベルミータ国の空を黒い雲で覆ってしまったんです」



僕はシェーラの話を聞きながら、僕のオタク魂が早くこの物語の続きを知りたいとうずき出していた。



闇の魔王、お姫様、最強の賢者。



そんな僕の大好きなキーワードたちが、僕の頭の中で楽しそうに踊っていた。



「賢者様、お願いです。

私は賢者様に闇の魔王、ダーギルを倒してもらい、私の姉、ルエラを救ってもらいたいんです」



当然来るはずの姫からのその願いに僕は興奮しながらも戸惑っていた。



本当に僕なんかが闇の魔王を倒せるのかと。



僕は込み上げてきた不安を胸にシェーラに話しかけていた。



「シェーラさん、その闇の魔王って、きっとものすごく強いんですよね?」



シェーラは僕のその質問を聞くと、悲しみに沈んだ表情を見せて、僕にこう言った。



「闇の魔王、ダーギルは恐ろしいほどに強いです。

並みの冒険者が束になっても勝てないほどに……」



僕はシェーラのその話を聞きながら、僕の異世界生活が始まった瞬間に終わる予感を抱き始めた。



「シェーラさんのお願いって、僕の手に負えないことなんじゃ……。

シェーラさんは僕のことを賢者様って呼んでいるけど、僕が本当に強いかはまだ未知数で……」



僕が弱気なことを口にすると、シェーラは僕の言葉を否定した。



「賢者様はとてもお強いです。

このベルミータ国では誰も敵わないほどに」



僕はシェーラのその言葉に驚いていた。



この僕がそんなに強いのかと思いながら……。
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