ゾーイ・テイラー〜温もり、のちにキス〜
「なっ……!!」

一瞬だったものの、突然のキスにゾーイは顔を赤くする。ロネはニコニコと笑った。

「ひ、人前でするな!!」

そう言い顔を逸らすゾーイにロネは「可愛い」と何度も言う。ゾーイは耳まで赤く染まっていった。



ロネとゾーイがやって来たのは、リリスの田舎町だ。辺りは森に囲まれて野生の動物や精霊が数多く住んでいるらしい。

「山奥にはトロールや巨人が暮らしているんだって。リリスにいる間に見に行けたらいいな」

雪が薄っすらと積もった道を歩きながらロネは白い息を吐き、言う。巨人は目にしたことが一度もない。

「巨人……。少し怖そうだな」

ゾーイがそう言い、ロネの手を握る力を強める。ロネはゾーイが甘えてくれていることに胸の高鳴りを感じた。

「ねえ、宿に行く前にどこか観光していかない?ちょうど通りがすぐそこにあるし」

宿に着いたら手を離さないといけない。まだゾーイとロネは手をつないでいたいと思ったのだ。

「いいぞ。どこかでお茶でもしようか」

ゾーイがそう言ってくれたので、ロネは通りへと向かって歩く。通りにはコートやマフラーに身を包んだ人が何人かいた。
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