七色
 海へ向かう近道なのか、神長くんは左手に広がる林の中へと道路を逸れた。

 気持ちの良い道だ、道の片側から、崖に向かって斜めに生えた木々が屋根のように道の上に覆い被さり、ずっと先まで続いている。

 小高い場所から海へと緩やかに下ってゆくような感じになるのだろうか、枝葉の隙間から見下ろす海は想像以上に透明だ。暑さを倍増させる蝉の声を、吹き抜ける風がさらっていく。僕は大きく息を吸い込んだ。

「もうすぐビーチだよ」
 優月くんは、早く熱帯魚を見せたくて仕方がないといったようすで僕の腕を掴み、神長くんの前に出る。

 木々に囲まれた散策路の脇から伸びる石段を、水着姿の男の子が駆け上がってきた。その小さな手にはしっかりとシュノーケリング用のマスクが握られている。ここを下るといよいよ海だ。自然と歩みが速くなる。

 階段を下りきって、綺麗に弧を描いた波打ち際まで真っ直ぐ進む。左側には波の侵食で造られたような不思議な形状の岩場が見える。

 海水浴客が引き上げ始めようとしている最中、僕たちは緩やかに波が押し寄せる水際を岩場に向かってどんどん進む。
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