七色
「おーい! ありがとうなー」
 ワンテンポ遅れて僕が呼びかけると、少年は手を振って応えてくれた。

「なんかいいよね、こういうの」
 それが何かははっきりと言わなかったけど、僕には優月くんの言わんとすることが分かる気がした。

「うん」
 口元が自然と上がる。胸の中が優しい気持ちで満たされていた。

「あ、テント」
 準備をしなくてはいけないことを思い出して振り返ったが、神長くんはさっさとテントを張り終えて、着替えまで済ませている。僕たちは慌てて立ち上がった。 

「神長は海のことも色々詳しいよ。ダイバーなんだ」
「へえ」
 それを聞いて納得した。綺麗に引き締まった身体と日に焼けた肌には、確かに海が良く似合う。

「坂巻さんは海に潜ったことある?」
「いや。潜るどころか、海に来るのが小学校以来だよ」

「マジで? 海の中ってすごいんだ。俺たちの住んでる世界のこんなにすぐ近くに、もうひとつ全く違う世界があるってわかるよ」

「うん、確かにすごいよな。写真で見たことある」
 透明な水底を見下ろして僕は言う。

「入ろうよ」
「え?」

「海!」
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