七色
4

 カッターシャツの襟元を緩めて、ふっと息を吐き出す。ビジネススタイルには不釣合いな僕のデイパックには、着替えの他に買ったばかりのシュノーケルセットが入っている。

 初めて海の世界を覗いてから五日が経つ。僕はあの感動が忘れられずに、インターネットで世界中の海や熱帯魚を夢中になって調べた。

三浦半島にいる熱帯魚は、冬を越すことが出来ない死滅回遊魚というものらしい。夏の終わりと共にいなくなってしまうのかと思うと、あの美しい彩りに切なささえ感じる。

 快特電車は緩やかに京急川崎駅のホームに入っていく。見覚えのある顔と窓越しにすれ違う。あの日と同じように一度下車すると、優月くんは僕に向かって大きく手を振ってきた。

「まきちゃーん!」
 目の下が殴られたみたいに青くなっている。明日を何が何でも休日にしようと、相当無理をしたようだ。

 少し遅れてスーツ姿の神長くんがきて、僕に向かってお辞儀をする。たった五日ぶりなのに久しぶりに感じてしまうのは、やっぱり二人に会いたいと思っていたからなのだろう。
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