七色
「あ、来た。乗りましょう」

 一本前の鈍行を逃しておきながら、快特に乗らないのも不自然だろう。それに元々行き先は同じだ。僕は促されるままに快特に乗った。車両に入ると彼は当たり前のように僕の隣に座った。

「あ、そういえばどこまで行くんですか?」
「一応、僕も三崎口まで」

「なんだ、一緒だったんだ。それで、なんで三崎口まで? ……あ、わかった! 『みさきまぐろきっぷ』でしょ!」

 質問しながら自己完結しているようだったが、彼は子供のように無邪気な目を向けながら、僕の答えを待っている。ペースに引き摺られながら、会話は続いていく。

「いや、特に目的があるわけじゃないんだ。学生の頃通学で毎日この電車に乗っていたのに、終点まで行ったことがないなって、ふと思ったから」

「え、それだけ?」
 彼はきょとんと目を丸くした。

「まあ」
 あまりにも面白みのない答えだったろうか。嘘でもいいから、『マグロ』と答えて、話を適当に合わせておけば良かったかと思ったところで、「いい!」彼は急に僕の右手を掴んだ。
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