七色
「俺ね、そういうあてもない一人旅みたいの、すごく憧れてて!」

 電車でただ終点まで行くだけのことを旅と言っていいのかはわからなかったが、僕は勢いに呑まれて同調していた。……これは、僕の周りにはいない種の人間である。

「ちょうどいいから一緒に海に行きましょう。結構みんな漁港止まりだったりするんだけど、ちょっとその先まで足を延ばすとビーチだから。友達が車で迎えに来るから、駅に着いちゃえばそこからはすぐだし。俺、優月(ユヅキ)っていいます」

 掴んだ僕の手をぶんぶん振りながら、彼は歯を見せて笑った。これはもう一緒に行くことになっているのだろう。

「……坂巻です」
 何故こうなったのか自分でもよくわからなかったが、元々これといった目的すらない旅だ。それに、こんな状況をちょっと面白いと思い始めている自分がいた。

 景色はどんどん流れて、雲の切れ間から青空が覗く。空が明るくなり始めた。
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