異世界和カフェ『玉響』。本日、開店いたします!
 単調な作業の繰り返しに自然と溜息が零れる。

 ――やっぱり、向いていないんじゃないかなあ。

 私が焼いた皮の状態を確認している父の横顔に目を向ける。

 その目の色は綺麗な青色。短くカットされた髪は金色である。

 一目で外国人だと分かる父は、ラグビーでもやっていそうながっちりした体格の持ち主。そして、娘である私が言うのもなんだが、滅多に類を見ないレベルの格好良さだ。いわゆる、イケオジというところか。

 精悍な顔立ちは、本当は四十一歳だというのにどう見ても三十代前半くらいにしか思えず、店の常連であるお婆さんから、父目当ての女子高生に至るまで大人気である。

 とは言っても、父が、誰かに靡くことはないけれど。

 私たちは、三年前に母を病気で失った。

 その前も後も、父の愛は母だけのもので、寡夫となった父に粉を掛けてくる女性は多かったが、父はそれに見向きもしなかったのだ。

 そんな暇はない。

 今は娘を育てることが第一だと一蹴し、当時、高校生だった私を大学へ行かせ、母と共同経営していた玉響を一人で支え、一心不乱に働き続けた。

 いつだって父は一人でしゃんと立っていて、私のことを気に掛けてくれた。
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