異世界和カフェ『玉響』。本日、開店いたします!
 ――うう、地味だ。

 天板の上で焼かれているどら焼きの皮を見つめ、溜息を吐いた。

 プツプツと空気穴ができている。

 これが、パンケーキを焼いていたのならどんなに楽しかったことだろう。

 億劫な気持ちになりながらも、生地をひっくり返す。

 綺麗な焼き色がついていたが、こんなものか、としか思えなかった。

「……ね、お父さん。うちもどら焼きの皮を焼く機械を導入しようよ。そうしたら、この作業も要らなくなると思うんだけど」

 そういう機械があることは知っている。だが、父はいい顔をしなかった。

「うちはそういう機械類を使っていないことに定評がある店だから、却下だ」

「……だよね」

 過去何度か繰り返した問答だったので、答えは分かっていた。

 一言一句違えず返ってきた言葉に、やっぱり駄目かとしか思わない。
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