異世界和カフェ『玉響』。本日、開店いたします!
 憔悴しきった父のその言葉を聞き、私は黙って自分の部屋へと引き返した。

 自分でも驚くくらいにショックを受けていた。

 部屋に戻り、ベッドに潜った私は、ようやく父も悲しんでいたのだという事実を理解した。

 そうして、その悲しみを隠し、私のためにと頑張ってくれる父に、何か返せないだろうかと、今更ながらに考えたのだ。

「お父さんが……喜ぶこと」

 それは、何だろう。

 一晩考え、私が出した結論は、『玉響』を継ぐ、という実に単純なものだった。

 父は、母と一緒に経営していた店をとても大切にしている。

 できれば、私に跡を継いでもらいたいと思っていることだって知っていた。

 だけど、私は和菓子には興味がなく、父の気持ちを知りつつも無視してきた。

 ――ケーキ屋さんだったら、喜んで継いだのに。

 いつだって、私はそう思っていた。

 今の今までずっと。

 その考えは、今だってなくなったわけではない。

 だけど、先ほどの父の姿を見て、このままではいけないと思ったのだ。

 私のためにと踏ん張ってくれている父のために、私ができること。

 それは、『玉響』を継ぐことしかなくて、こうなればもう、仕方ないと腹を括るより他はなかった。

 だから、私は父に言ったのだ。

「『玉響』を継ぐ」と。
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