激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
でも、『一本でいい』なんて紬らしくて緊張が緩んだ。


「たしかに一本あれば十分だな。外から順に使っていけば大丈夫。それに間違ったって問題ないさ。俺なんて、子供の頃料理をひっくり返して叱られたもんなぁ」

「え!」

「ドジだろ?」


目を丸くする紬は、首を小さく振った。


「そうじゃなくて、小さい頃からこんな高級店に来ていたなんて、宝生家は違うなと思って」


そこか……。


「でも、俺はファミレスのほうが好きだぞ。食べているのをじっと見られてるのも落ち着かないし、この料理に合うお酒はこれとか、いちいち面倒じゃないか。好きなものを好きなだけ食べられたほうがいい」

「あはは。お坊ちゃんのセリフとは思えません」


彼女は笑っているが、本音だった。

幼い頃からこうしたレストランでの食事を経験させられたのは、将来太平物産を継ぐためだ。

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