激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
「小銭の持ち合わせがなくて、これで。すみません。次の仕事の時間が迫っているので失礼します」

「待ってください。お釣り……。あ……」


彼は花束を自分のジャケットで覆い、あっという間に走り去っていく。

ワゴンのドアを開けたままで離れられなかった私は、小さくなっていく彼の背中を呆然と見つめていた。


「素敵な人だったな」


板垣さんにさげすまれて最悪の日だと思っていたのに、宝生さんがあっという間に幸福感で満たしてくれた。

傷ついた私の心まで癒してもらえた。

この一万円はお守りに取っておこう。
いつかまたどこかで会えたら、そのときに返そう。

そんなことを考えながら、渡されたお札をじっと見つめた。



ひどくなる雨の中店に戻ると、四十代後半で男性の店長が難しい顔をして私を待っていた。


「重森さん、大変だったみたいだね」


連絡が入っているんだ。


「すみません。お花を何度も踏まれて怒ってしまいました」
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