氷の美女と冷血王子
ピンチ! ピンチ!
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
深々と頭を下げる川崎社長。

「・・・」
俺は苦笑いするしかなかった。


川崎社長の記事が出るらしいと聞かされたのは、今日の重役会議。
社長以下出席者も揃い、さあ始めようという時だった。

いきなり俺の目の前に立った河野副社長は、どこから持ってきたのか発売前の原稿を広げて見せた。

「これはどういうことですか?専務の調査が甘かったんじゃありませんか?」
記事を見せられそう言われれば、返す言葉がない。

「ここまで進んだ事業計画を白紙に戻す事でどれだけの損失がでるか、分かっていらっしゃいますか?」
畳みかけるよう言われ、
「ええ」
感情のこもらない返事を返した。

この状況が危機的なのは、言われなくても分かっている。

「ほー、じゃあどうするお考えかぜひ聞かせてください」
意地悪く俺を見る河野副社長。

「それは・・・」

きっとこの時、俺は挑発に乗ってしまったんだ。
河野副社長は、はじめから俺を追い込むつもりだった。
それなのに、

「ご自身で責任をお取りになるんですね?」
すごい気迫で詰めよられ、
「そのつもりです」
と、言い返してしまった。

「専務っ」
徹の焦った声が耳に届いたが、俺は無視した。

こんな挑発に乗るなんてまだまだだな。
でもなんとかしよう。この事業だけはどうしても成功させたいんだ。
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