氷の美女と冷血王子
「ここは?」

麗子の運転する車に乗せられやって来た都心のマンション。
そんなに豪華な作りではないが、立地的にはかなりの高級物件のはずだ。

「祖母が管理しているマンションなの。しばらく貸してもらう約束で」
そこまで言うと麗子は黙ってしまった。

どうやら麗子はここに身を隠すつもりだったらしい。
確かに、誰にも知らせずにここに隠れられたら見つけ出すことはできないだろう。

「そんなに俺のことを避けたかったのか?」

そこまで嫌われていたんだと思うと、さすがに傷つく。

「好きとか嫌いの問題ではなくて、もう一緒にいるべきではないと思ったの。これ以上私も傷つきたくはないし、誰も傷付けたくない。それだけ」

何でもないことのように、麗子は言う。
しかし、

「それはお前の本心か?」
「え?」

「俺たちの関係に障壁が多いのは承知している。平凡な恋愛でないのも分かっているつもりだ。それでも、俺はお前と一緒に居たいし、お前だってそう思ってくれたんじゃなかったのか?」
「それは・・・」.

「何があった?母さんに何を言われた?」
「奥様は、関係ない」

「じゃあ、どうして逃出したんだ?俺の言うことだけを信じて待っていろって、言ったよな」
「うん」

「たった5日が待てずに逃出した理由を聞かせてくれ」
それを聞かないことには、納得できない。
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