氷の美女と冷血王子
2度と、離さない
昔からなじみの会員制クラブ。
静かで落ち着いているし、プライベートが守られているのが魅力で若い頃にはよく来ていた。
仕事が忙しくなってからは来る暇がなくて月に1度くらいの利用だったが、ここに来ると麗子が喜ぶから最近は頻度が上がっている。

「カクテルのお替わり、頼もうか?」
「うん」

ちょうどグラスが空いたのが見えて自分のと一緒に注文した。

一華の奴が素性をバラすだけバラして帰って行ってから、麗子の様子が少しおかしい。

「どうかした?一華が、何か言ったのか?」

何か、思い詰めたような表情。
こういうときは大抵ろくな事を考えていないんだ。

「いいえ。何でもない」

「じゃあ、何でそんな顔をしているんだ?」

「そんな顔って・・・」

唇を尖らせる麗子。

これは、本当に一華が余計なことを言ったのかもしれないな。
河野副社長の件については、表向き公表してはいないが一華は薄々気づいているし、その分色々と思うところもあるはずだ。
暴走しないといいんだが。
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