氷の美女と冷血王子
「ありがとうございました」

ママに見送られ、店を出た俺はかなり酔っていた。
1人で飲みに出てここまで酔っ払うのは珍しい。
これも、ママと彼女のお陰かな。
話してみれば、ごくごく普通の同世代の女子。
美人を鼻にかけるでもなく、媚びを売るわけでもなく、気持ちのいい女性だった。
外見が整いすぎていて返って先入観が働いてしまうが、実際に話してみた方が親しみが持てた。
ただ、どことなくコンプレックスを持っているような印象があって、気になった。
恵まれたが故の生きにくさのようなものは、きっと彼女にしかわからないんだろうな。それは俺も同じだから。

大通りの近くまで10分ほど歩き、家の車を呼んだ。
車が来るまで、夜風に当たりながら街を歩く。
こんな風に1人で歩くのはいつぶりだろう。
日本に帰ってきてからはなかなか1人の時間もなかったから。
もう少し仕事が落ち着いたら自分の時間を持ってみるか。
そうすれば気持ちに余裕だって生まれるかもしれない。
その前には、目の前の仕事だな。そのために、秘書を見つけなくては。
仕事ができて、気兼ねがなくて、信頼できる・・・あれ?今、俺は彼女を思い出した。
それって・・・
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