氷の美女と冷血王子
「すみません、お待たせしました」
ちょうどそこへ彼女が戻ってきた。

「ありがとう。とってもよくできている」
縫い方も糸の色もすべて店でしたものと遜色なく直されている。完璧だ。

「どういたしまして」

「本当にすごいね。君って何でもできるんだな」
「そんなことないですよ、ただ器用貧乏なだけで」

器用貧乏って・・・。そうかなあ、どちらかというと欠点が見つからない気がするが。

「何かお礼をしなくちゃね」
「いいですよ」
「でも・・・」
何も無しでは申し訳ない。

「じゃあ、ボトルを入れてください。うんと高いのを」
「いいよ」
お安いご用だ。

「それと、お名前を聞いてもいいですか?」
そう言えば名前を名乗っていなかった。

「鈴森商事の専務さんですよね?」
「うん。鈴木孝太郎と言います。君は?」
「麗子です。青井麗子」
律儀に、フルネームを名乗った。

「徹のお友達なら、孝太郎さんでいいですか?それとも、鈴木専務ってお呼びした方がいいかしら?」
チラッと俺を見て、探っているような視線を向ける。

「孝太郎でいいよ。徹とは友達なんだ。君も知り合いだろ?」
「ええ。高校時代に」
フーン。

高校では別れてしまったからその頃の徹を俺は知らないが。彼女はきっと、目立っていたんだろう。その頃も見てみたかったな。
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