氷の美女と冷血王子
先日お店に駆け込んできて平手を見舞ったのは、バイト先である花屋の店長の彼女。
店長とは何度か飲みに行ったこともあったし、普通にラインも交換している仲のいい知り合い。
それが・・・。

少し前から彼女とうまくいっていないって話は聞いていた。
付き合っていれば喧嘩だってするし倦怠期だってあるんだからと、私は店長を励ました。
間違っても男女の関係になるつもりはない。それは店長も同じだったと思う。

「俺たちダメかもしれない」
週に1度のバイトの終わりに店長が呟いたのを聞き、その声が悲しげで、しかたなく相談に乗るようになった。
オススメのデートコースや、彼女が喜ぶプレゼント。
何よりももっと話し合うべきよとアドバイスもした。

確かに、最近は店長と話す機会は増えていたし、「仲がいいですね」なんてスタッフに言われることも何度か会ったけれど・・・。
まさか、彼女に怒鳴り込まれるなんて。

はあー。
何でいつもこうなるんだろう。

神に誓って、私は何もしていない。
店長のことを男として意識したこともない。
それでも、世の女達は私が悪いって言うのよね。

ちょっとだけやけくそな気分になって、少し冷めたコーヒーを口に運んだ。
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