氷の美女と冷血王子
香山徹。27歳。
俺とは子供の頃から一緒に育った幼なじみだ。

元々は父さんの親友の息子で、徹のおやじさんも会社を経営していた。
父さんみたいな働き蜂ではなく、家族を大切にする優しい人だった。
夏になれば海水浴、冬にはスキー、どれも徹のおやじさんが連れて行ってくれた。俺は、徹がうらやましかった。
クリスマスも誕生日も仕事優先で、約束を守らないうちの父さんより好きだった。
しかし、俺たちが小学5年の頃。状況が一変する。

徹のおやじさんの会社が倒産したのだ。
実際は少し前から経営が傾いて、父さんも加わって必死に立て直しを図ったようだが、どうしようもなかった。
そして、倒産から1ヶ月後徹のおやじさんが亡くなった。
交通事故だった。疲れがたまっていたおやじさんの居眠り運転と聞かされたが、実際の所はわからない。
葬式の日、俺は初めて父さんが泣いている姿を見た。
それだけ、無念で悔しかったんだと思う。
追い打ちをかけるように、病弱だったおばさんが入退院をを繰り返すようになり、半年後には亡くなってしまった。
小学生の徹は、ひとりぼっちになってしまった。

親戚も何人かいたが、誰も引き取るとは言わなかった。
まあ、会社が倒産した時点で親戚からも疎遠になっていたから、しかたがないようにも思えるが。最終的に、父さんがうちに引き取った。
結果、小学5年の終わりから中学卒業までを同じ家で育った。
勉強をするのも2人、遊ぶのも2人、いたずらをして母さんに叱られるのもいつも徹と一緒だった。
俺が大きな反抗期を向かえることもなく、真っ直ぐに育つことができたのは徹がいてくれたお陰だと思う。
だから、俺たちは兄弟みたいな存在なんだ。
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