死んでもあなたに愛されたい
「あたしだけが逃げて、好きな人が独り苦しむなんて耐えられない。もう二度と、したくない」
「ひぃちゃん……」
「だったら、あたしのせいだろうが、一緒に苦しみたい」
あたしは、やっぱり。
愛したいし、愛されたいの。
そこがどんな地獄だろうと。
「それにね? 魁運となら、傷、ついてもいいよ」
「――傷つけねぇよ!」
パァン!と豪快にふすまが開かれた。
新鮮な空気とともに、熱のある大きな姿がふたつ。
「え……えっ!? 魁運!?」
「純也……」
「すみません、引き止められませんでした」
つぅちゃんに恨めしくにらまれ、赤羽くんはたじたじ。
それをよそに、魁運がドシドシ近づいてくる。
「まさか今のぜんぶ聞いて……!?」
「きーた」
「彼、すべて知っても、まったく動揺していませんでしたよ」
「……そう」
本当? 本当にちっとも動じてない?
あたしでさえショッキングな真実だったのに?
どこも苦しくないの?
その赤いピアスも、ネックレスも、重たく感じるなら、あたしが……。
「心配すんな」
つぅちゃんとつながっていた手のひらを、魁運にいたずらに奪い取られる。
指を交わすと、凛々しくほころんだ。
「白雪組のヤツに親を葬られたのが事実でも、ひとみを恨んだり、ましてやきらったりなんかしない。呪いの暴走のことは……正直よくわかんねぇけど、傷つけねぇように善処する」
「魁運……っ」
「もう離さないって決めたんだ」
うん、離しちゃやだ。
ぜったい、って、約束したもん。
そばにいられないと悔やむから。
せめてあたしたちだけは、この運命を信じていなきゃ。
「……本当に、おふたりの絆はお強いですね」
「〜〜っ、信用できるわけないでしょ!!」
皮肉めいた赤羽くんの独白を、つぅちゃんは全力でかき消した。