死んでもあなたに愛されたい
「カイ、ほんとにすごかったわ。いい走りだったわよ!」
あたし以外にも魁運への賛美が!?
……って、マユちゃん先輩か。
いつの間に横に来てたの。
「余裕持ってゴールしてたわね」
「はい! さすがあたしの魁運!」
「やっぱりカイと同じチームだと楽に勝てそうね」
そういえば、体育祭で優勝したいっていうお願いが、やさしめなほうって言ってたっけ。
今のを見てなっとく。そういうことだったのね。
「い、1位、お、おめで……とう……っ」
パチパチ……。
今にも消えそうなほどか弱げな、拍手の音がした。
またしても魁運への賛美! 誰だろう!?
音のしたほうへ首を回すと、影野さんが真剣な面持ちでゴールを見据えていた。
「あら。体育祭マジックかしら」
「……ちがいますよ。ちがうって、思いたいです」
たとえ体育祭ムードにのまれているとしても。
この魔法が解けなければいい。
少しずつ、少しずつ。
本心と足並みが合っていけばいい。
そうやって境界線をきれいになくしていきたい。
「次、二人三脚だってさ」
魁運が応援席に戻ってきた。
汗ひとつかいていない。
タオルとドリンクを準備してたけど、まだいらなかったみたい。
「おつかれ魁運!」
「次のも出るのよね? ペアは?」
「あたしです!」
「最凶ね」
「そうです、最強なんです!」