死んでもあなたに愛されたい
このときのために練習を重ねてきたんだ!
足をつないで。
腰を抱いて。
練習という名目で、合法的にべったり密着できて、実に役得だった……ぐふふ……。
「ひとみん、気味のわるい笑いもれてるわよ」
「おい繭。どこが気味わりぃんだよ」
「……恋は盲目ね。ご愁傷様」
ハッとしてすぐに表情を引き締めた。
何もなかったように「がんばろー」と気合いを入れてみる。
そう、何もなかった。何もなかったでしょ! そういうことにしておいて! マユちゃん先輩、憐れまないで!
「そ、そろそろ行こ、魁運!」
「ああ、そうだな」
「赤軍リードしてるからがんばんなさいよ~」
がんがんプレッシャーをかけてくるマユちゃん先輩。
完全にあたしたちをおちょくってやがる。
がんばるよ。魁運とペアだもん。
100パーセントがんばれるよ。
赤軍の単独首位で、総合優勝も夢じゃない。
やるからにはてっぺんとらなきゃね!
「俺らは一番最後みたいだな」
「ラストにふさわしいペアってことかも」
「ふっ、自画自賛」
選手の待機場所でいちゃついていれば、だんだんと他の選手たちに距離をとられていく。
まあいいんだけどね。
魁運の楽しそうな笑みは、あたしだけのもの。
「ひぃちゃーん!」
物怖じせず声をかけられるのは、数少ない。
いつの間につぅちゃんのメンタルは強くなったんだ。