死んでもあなたに愛されたい
「わははっ!」
「1位だなんてすごいじゃない」
「ぼくがんばったんだー!」
うすっぺらい笑い声が、扉越しに聞こえてくる。
キモ。吐きそうだ。
こちとらてめえの仕事を片っ端から超特急で片付けてきたんですがね?
相変わらず、パッパラパーな脳みそしてやがる。
音を立てないようにひっそりと扉を開けた。
玄関じゃない。裏口の。
俺は表から出入りしちゃいけないんだと。ここでも差別かよ。こまけーな。
うざったいけど、もう慣れた。
15年だ。
こんなクソみたいな日常を、365日 × 15年。
今さらなんも言わねぇさ。
「今日もつっかれた〜」
忍者のごとく忍び足で自室へ行くと、すぐ寝っ転がった。
自室といっても、実質、物置。
人ひとりぎり寝れるくらいのスペースしかない。
そんなごく狭な収納部屋を、アイツらは勝手に「奴隷室」って呼んでるみたいだけど、俺はそこそこ気に入っている。
「いつもどおりめんどうな……って、そうだ、今日はちょっといつもとちげぇんだ」
あのちっこい女の子。
あの子と遊んで、ひさしぶりに笑えた。
唯一、楽しい時間だった。
おかげで平手打ち食らっちまったけど。
「……いいよなあ、」
あの子、いつもあんななのかな。
きゃっきゃ笑って、うれしそうに飛び跳ねて。
きらきらしてた。
ピュアで、明るくて、真っ直ぐで。
悩みとか、苦痛とか、そういうのとは無縁そう。
まだ小学生だし、ふつうはそうなのかもな。
頭ん中、遊びのことでいっぱいで。
いいな。ずるいな。
俺の世界と取り替えてくんねぇかな。
なあんて嘘、ぜーんぶ嘘。
どうせ俺は蝉以下だ。