死んでもあなたに愛されたい





「いいんだ、俺は。これで。……いいんだ」




強がりじゃない。

これは、単なる、あきらめ。


ほんのちょっと、外がまぶしいだけ。



ふつうじゃなくても、にこにこへらへらしてれば、それなりに生きていける。

虐待はあれど、これまで最小最低限の生活を提供してくれてるし。


そのことには感謝してる。

一応。言葉だけな。
それ以上の気持ちはねぇよ。あるもんか。



外ではいい子に振舞ってやってんだ。それと等価交換しても、おつりが出る。

アイツら、まじでいっぺん、俺に感謝してほしい。



こんな生活も、あと半年。


卒業したら、義務教育もおしまい。


そしたら家を出てってやるんだ。

はじめはホームレスでもいいし、やばいヤツらと関わったっていい。


自分で稼いで、自分で暮らしていく。
自分らしく生きていく。


この地獄ともおさらばだ。




「……おっと、このまま寝ちまうとこだった」




あぶねぇ、あぶねぇ。

部屋着に着替えて、包帯も替えねぇと。




「あーあー、まーた青くなってら」




制服を脱いだ、その下。

素肌を隠すように巻いていた包帯をほどく。

あらわになった体には、ほとんど肌色はない。



赤。青。黒。黄緑。茶。

色とりどりできれいだろ? とか言ってみたりして。アハハ。笑えねぇよな。うん。



毎日毎日殴られ、蹴られな生活を送っていたら、いやでもこうなる。

古傷が治ってきても、また新しい傷がつく。


タバコを押しつけられたり、カッターで切られたり、花瓶を投げつけられたり、階段から落とされたり……。

日常茶飯事だ。軽く犯罪だよな。それでも生きてる俺ってすげー。




「今日は青アザが多いな……」




うげ、血も出てる。
やっと閉じてきた傷口だったのに。

痛いなあ。つらいなあ。


つっても、痛覚は死んだも同然なんだけど。



『お兄さんは?』

『え?』

『痛くない?』



そういえば。

あの女の子、心配してくれたっけ。


まさか……。




「いや、まさかな」



< 310 / 329 >

この作品をシェア

pagetop