死んでもあなたに愛されたい



でも。そうだな。

しいて言うなら。




「……死なない、ため、かな」




ガキになに言ってんだろう。

するっと本音がこぼれてしまった。



情けねえ。つくづくダセぇな俺。


しかたねえよな。

これが俺の意地だ。最後の、砦だ。




「そっか!」




女の子はなぜかうれしそうに俺を見つめた。




「よかったあ!」


「よ、よかった??」


「でもね」




血のついた手のひらが、俺のどうしようもない手を包みこむ。


俺より低い温度。幼い形。

それでもあったかいと感じるのはなぜだろう。




「がんばりつかれたときは、あたしがたすけに行くからね!」


「……え、」


「お兄さんがあたしをたすけてくれたみたいに」




嘘でも方便でもない。

この子は、本気だ。


目が見えなくても感じられる。

本気で、助けに行く、と。


この世の何よりもやさしく、かっこいい願いを、信じている。

けして叶うことはないだろうに。


そう。それは叶いっこない。


ずるいくらい純真な。
それでいて、残酷な、夢見る願い。


それをもらえただけで、俺は、もう。




「ありが」


「だめ!! あたしが先に言うの!」


「へ?」


「ありがとうお兄さん!」




……かなわねぇな。


敵わない。
叶えられない。

いいよ。いいんだよ。


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