イケメン拾った!魔法を隠して慎ましく?スローライフ…できてない!!
プロローグ
「あれー?なんかボロ切れ落ちてるわ」

湖で保存食用の魚取りに勤しんでいたマキアージュは右手の親指と人差し指をくっ付け、丸の中から覗きこむ。

ー昔、風で飛んでったじぃさんの服か?ー

忘れもしない一年半前、運悪く洗濯が突風で飛ばされ探してもどうしても見つけられずに育て親のクソジ…けふん、じぃさんの一張羅だったこともあり見事な雷を落とされた挙げ句にす巻きにされ一晩木に吊るされた。

じぃさんは生き物と話ができた。その不思議な力のせいで差別され迫害され一時期、都の軍隊に強制的に召し上げられて斥候として戦に行かされていたとか。
待遇も劣悪、荒んだじぃさんは乱戦に紛れて逃げ出し人の入り込まない森深くに住むようになった世捨て人である。
そんなじいさんに私は拾われた。
ある日薪集めに森に入ると雉が《熊が呼んでるって、二山向こうの片目のやつ。雀が騒いでた》そんなことを言ってたらしい。
昔、猟師に目玉を打たれた熊を助けたことがあったじぃさんは狼に頼み行ってみた。すると木々の間少し開けた場所には熊が二頭。一頭は片目、もう一頭は少し小降りで寝転び丸くなっていた。
《来たか。》片目と視線があった。

《なに用だ?》心の声で問いかける。

《人の子どもを見つけた。鷲が連れ去ろうとして居たから奪った。まだ産まれてすぐの幼子だ。弱っているから妻に乳を与えさせていた》片目の視線がもう一頭に向く。近づいて覗き混むと、まだ首も座らない程の小さな赤ん坊が必死に熊の乳にすがっている。

《わかった》その一言、心の声で告げるとじぃさんは赤ん坊を受け取り小屋へ連れ帰った。それが私だ。
そして今まで育ててくれた。時に厳しく、いつも厳しく、さらに厳しく……まぁ、山奥でも逞しく生きる術を叩き叩かれ叩き込まれたわけだよ。(くそっ)
そのじぃさんも一年前に呆気なく他界、それからは森の奥深くにある小屋で年に一回山3つ越えてくる流れの行商おっちゃん以外、人との交流もなく悠々自適なスローライフを満喫している。

齢15歳、か細く可憐な(自称ですがなにか?)少女には危険では?
はい、お答えします。私マキアージュは特異体質、つまり世では希少な魔力持ちです。それがわかったのは拾ってから3ヶ月位後何かの拍子にギャン泣きして魔力暴発、小屋を吹き飛ばしたそうな。(泣きながら立て直したって言われてもねぇ(笑))
そっからはクソジ…じぃさんに使い方マスターを強制的にさせられ(自分でなんとか覚えろって言われた)、他人に知られないようにと耳にタコができるほど言われたからまぁ今は何ら問題なく生きているって訳。
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