値札人間
無視する
それから数日後、イブキの人気は少しずつ落ち着いてきていた。


女子たちはみんなイブキの迷惑にならないよう、人が集まりすぎないように配慮している。


けれど人気が落ちたわけじゃなくて、蔭ではファンクラブもできているという噂だ。


「ねぇイブキ君。クッキー作って来たんだけど、よかったら食べる?」


イツミが体をくねらせながらイブキに話かけている。


イブキは目の前に差し出されたプレゼントに戸惑い、表情を歪める。


今までも他の女子たちが手作りのお菓子などを持参してきていたが、イブキはそれを受け取ることはなかった。


手作りのものは何が入っているから分からないから怖いのだと、あたしにはこっそりと教えてくれた。


イブキのことだから前の学校でも手作りプレゼントはよく貰っていたようだけれど、食べきれないカップケーキを当時飼っていた愛犬に与えたところ針が出てきたそうなのだ。


針は愛犬の喉に刺さり、病院へ連れて行って摘出されることになった。


それからしばらくは元気だった愛犬だが、傷口からバイ菌が入り、それが脳まで到達して結局命まで奪われてしまったらしい。

< 173 / 226 >

この作品をシェア

pagetop