値札人間
約束
「アンリ聞いて? 昨日嫌なことあったぁ」


それは昼休憩中の教室での出来事だった。


イブキが泣き顔をしてあたしに話かけてきたのだ。


その瞬間、教室にいた女子たちの視線が一斉に集まってくる。


女子たちから感じる視線を気にしながらも、あたしはイブキへ笑顔を向けた。


「なにがあったの?」


「知らない女子に隠し撮りされた」


イブキなら、そのくらいのこと日常的にありそうだ。


でも、そういう行為をされて喜ぶ人は少ない。


「それはダメだね。盗撮は犯罪だし」


あたしはわざと大きな声で言った。


数人の女子たちがきまり悪そうにうつむくのを見た。


すでに隠し撮りをしてしまった子たちだろう。
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