値札人間
「そういうことだよ。価値なんて見えない。数字に惑わされることなんてないんだ」


イブキの言葉に自分の心が軽くなっていくのを感じた。


他人の数字が見えるようになってから、あたしは少し価値を気にしすぎていたのかもしれない。


「それよりさ、明日の放課後デートしない?」


イブキはスマホを鞄に戻してそう聞いてきた。


「え……うん……」


「今度はどこ行こうか? どうせだからアンリが元気になるような場所がいいね」


本当に楽しそうにそう言うイブキに、どんどん心の中が晴れていく感じがした。


きっと、イブキならあたしの価値が見えたって気にしないだろう。


こうして、ずっと一緒にいてくれるはずだ。


そう思うとようやく安心することができた。


でもあたしは気がつかなかったのだ。


イブキが時々、あたしの額へ視線を向けていることに……。
< 215 / 226 >

この作品をシェア

pagetop