【短編】恋愛モルモット~恋の価値観~
「そうそう! そんな感じ」
いつものベンチからは少し離れた場所。
噴水の前で、あたしと宮城は風船を空へとかざしていた。
薬局の名前入りの青い風船を。
周りには人はいなくて、たまに犬の散歩の人が通るくらい。
誰もいなくても初めは恥ずかしかったけど、それも最初だけ。
それは宮城も同じだったみたいで、最後の方は完全に2人して風船相手にシュートフォームを決めていた。
「これで次の体育は完璧だね」
「里咲のフォームが合っていれば、な。
まぁ、こんな公園で人目に晒されながらこんな事するなんて貴重な体験もさせてもらったし一応礼は言っとくか」
「……刺々しい言い方だなぁ。あたしだってこんな所で教えるなんてもう嫌だってば」
「だな。傍から見たら間違いなくバカップルに見えただろうな」
「あ、だね」
青い風船を持ちながら、宮城と笑う。
くっと喉の奥で笑う宮城が嬉しくて、あたしは満面の笑みを零した。
「あっ……」
そんな和やかな空気があたし達を包んでいた時、突然強い風が吹き付けてきた。
軽く風船を抱き締めていたあたしの腕から風船が飛ばされてしまって……あたしはその後を追って、そして後悔した。
ものすごく、後悔した。
だって……風船は溶け合うように、水色の噴水の水の中へと落ちていってしまって。
それを咄嗟に追ったあたしは……大げさな音を立てて、噴水の中へと落ちた。
「きゃあ!!」
冷たい水が、一気にあたしの制服へと染みこんでいく。
咄嗟に取った受身は、しりもちをつく形になって……あたしのお尻によって潰されたと思われる風船の残骸がぷかぷかと水面に浮いていた。
……ありえない。
絶対にありえない。
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