【短編】恋愛モルモット~恋の価値観~
「いや……怒鳴って悪かった。
……別に怒りたかった訳じゃないんだ。ただ、心配だっただけで……大丈夫だったか?
怪我は?」
そう言って向けられた宮城の表情は本当にあたしを心配してくれてるみたいで……あたしは首を振る。
「大丈夫……」
「そうか……ならよかった。
……とりあえずこれ着てろ」
「え……いいっ!! いいよっ! あたしが勝手に飛び込んだんだもん、宮城に悪い……」
「いいから」
押し切られてしまって、あたしは仕方なく宮城のカーデガンを受け取る。
宮城がいつも着ている紺色のカーデガン。
袖を通すと、カーデガンが宮城の身体の大きさをダイレクトにあたしに教えてきて……なぜだか胸が高鳴る。
あたしの指先まで隠れてしまう袖に、スカートが見えなくなるくらいの丈。
水で濡れてしまった身体に、宮城のカーデガンから宮城の体温が伝わる。
それが照れくさくて恥ずかしくて……あたしはなかなか宮城に話し掛けられなかった。
胸のドキドキがうるさくて……どうしていいのか分からなかった。
その後。
宮城は、初めてうちまで送ってくれた。
「濡れたままの格好じゃ変な奴に狙われかねない」なんて言って。
うちまで送ると、宮城はいつも通りすました顔で「じゃあ明日」って一言だけ残して帰って行った。
その背中に「ありがとねっ」って叫んだら、背中を向けたまま片手を軽く上げた。
あたしは……せっかく宮城がカーデガンを貸してくれたのに、宮城の背中が見えなくなるまでその背中を見つめていたから、家に入った時にはすっかり冷え切っていて……
でも、手元にある宮城のカーデガンに自然と顔が緩んでしまっていた。
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