不本意ながら、極上社長に娶られることになりました

 

 週が明け、火曜日の午後三時過ぎ。

 お客様からの注文コールを受ける合間、会社受付から内線が入った。

 受付から内線が入ってくるなんて、これまでないこと。

 不思議に思いながら応じると、「お客様です」と知らされる。

 お客? 私に?

 そう疑問に思いながら聞かされた名前は〝桜庭(さくらば)様〟という馴染みのない苗字。

 仕事を一旦外れて受付のある会社エントランスへと向かうと、そこに待っていた姿に目が飛び出しそうになった。


 え、待って、なんで……。


 忘れもしない、美しい顔立ちと黒髪のロングヘア。

 今日は髪はダウンスタイルで和装ではないけれど、見間違うこともなかった。


「桜庭様、こんなところではなんですから、こちらにどうぞ!」


 私が出ていくよりも前に、受付前ではセンター長が女性の対応をすでにしていて、何やら慌てた様子だった。

 受付の子に「君、お茶をお出しして!」なんて聞き慣れないことを指示している。


「あの、すみません」

「ああ、北川さん、桜庭様とお知り合いなのか!」


 私が声をかけると、センター長は落ち着かない様子で「ご案内して」なんて言う。

 先週末のパーティーで千晶さんと親し気だった女性。

 結局あのあと、千晶さんには何も聞けないまま、あの会場から京都へ向かうのを見送った。

 知り合いもなにも、そもそも女性が誰なのかも私はよく知らないまま。

 それなのに、私に用って……?

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