不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
店を出て、地下鉄を使う凛香と篤志と別れ、同じ最寄り駅を使う修哉と駅までの道を歩く。
土曜の夜は街には人が溢れ、ほろ酔いで楽しそうな人たちと多くすれ違う。
最近は昼間、半袖でもいいくらい暖かい日もあるけれど、今晩は春っぽい優しい風が吹いている。
時折ふわりとやってきて、私の穿いている白地にブラウンの細かなドット柄のロングスカートをなびかせていた。
「お肉美味しかったね。来月はどこになるかな」
何気なく言った言葉に返答がなく、横を歩く修哉に目を向ける。
私の視線を気にすることもなく真っ直ぐ進行方向を向いたままの修哉は「来月って」と口を開いた。
「つぐみ、出られるの?」
「え? 出られるの、って?」
「だって……さっきの話。結婚とかしたら、今までみたいに夜飲みに出たりできなくなるんじゃん?」
そんな指摘をされて、考えもしていなかったことにハッとした。
結婚――その言葉は、自分には遠く他人事にしか聞こえない。
真剣にそんな指摘をされると、思わず「あははは」と誤魔化すように笑ってしまっていた。