不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
何度も訪れている駅ビルのフロア、見慣れているファッションブランドの店舗。
それらが今日はいつもと全く違うものに見えている。
ひとりや、友達じゃない、許婚という相手と一緒だということ。
寄り添って歩く洗練されたスーツの長身とは、しっかりと手も繋がれている。
「あっ……ここ、見てもいいですか?」
動揺しているせいか気付けば無駄にフロアを歩き回っていて、やっと目的の店舗のロゴが目に入る。
部屋着などのリラックスウェアを扱う女子に人気のブランドだ。
今まで実家では、楽ちんなスウェットにTシャツなんかで疑問も問題なく過ごしていた。
しかし、こんな風に突如まだ顔を合わせて間もない異性の相手と同じ住まいで生活していくこととなって、あまりだらしのない格好で家中をうろつくわけにもいかない。
相手の目の毒になってしまうし、無礼な話だ。
そんなことが頭をよぎり、ちゃんとした部屋着的なものを新調しようと思っていたのだ。
今までお店を見にきたことがあったけれど、購入にまでは至らなかったちょっと私にとっては高嶺なブランド。
身内にしか見られない部屋着にお金をかけるなら、やっぱり人目に触れる通勤服を優先してしまう。