不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「え、あのっ、桜坂社長……――」
買うものが決まりお会計に案内されると、ついて歩いていた桜坂社長がどこからともなくカードを取り出し支払いを済ませてしまう。
見たことのない、ブラックカラーのクレジットカード。
おろおろとしている間にお会計は済み、対応してくれたショップ店員に笑顔で「ありがとうございました」と見送られていた。
「あの、こんな、買っていただくのは……」
そういうつもりで一緒に来たつもりは全くなかった。
ただ同行すると言われて約束していたというだけであり、私の使うものを負担してもらうなんて予定さらさらなかった。
そんな申し訳ないこと恐れ多くて考えられもしない。
「なぜ?」
「え、なぜって……それは、ですね」
「妻になる者の出費を負担をすることに、何かおかしなことがあるか?」
つ、妻……!
桜坂社長の口からサラッと出てきた〝妻〟というフレーズに、落ち着かない心臓はまたドキッと音を鳴らす。
今日は一緒にいて、心拍数を上げてばかりだ。
私が赤いであろう顔で言葉に詰まると、桜坂社長は黙ったまま離れていた手を再び繋ぎ直した。
「次はどこを見る? 手を引いて好きに連れていけ」
軽くパニックを起こしかけている私は、今日の本来の目的がまたわからなくなりかける。
「わかり、ました……」と返事をしつつ、きょろきょろと立ち並ぶ店舗に目を向けて歩みを進めた。