不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
その晩。
乳白色の湯船に顎まで浸かり、揺れる水面をじっと見つめる。
ため息を吐きながら鼻の上まで沈むと、目の前でぽこぽこと泡が浮かび上がった。
あの後、スイーツブッフェからの帰り道……複雑な私の心情を知りもしない千晶さんは、やっぱり〝夫婦らしい〟のために私の手を握り、腰を引き寄せて表を歩いた。
私の鼓動は早鐘を打ち、体は熱く顔も恐らく赤くなっていたに違いない。
許婚だと知らされたあの時、〝桜坂社長〟という存在自体に緊張し、鼓動を速め顔を赤らめていた。
だけど、今はそれとは少し違う。
もちろん、彼のカリスマ性には相変わらず緊張する。
でも、それとは別に、私自身の気持ちに大きな変化があることに自ら気付き始めてしまった。
入浴を終え、バスルームをあとにする。
いつも通り水分を取りにキッチンに行くと、リビングに千晶さんの姿はなかった。
このマンションにいる時間、千晶さんは書斎である自室で仕事のためにこもっていることが多い。
仕事中なら寝る前に一言声をかけていこうと、書斎へと向かった。
「ふう……」と小さく息をつき、ドアをノックする。
返事が返ってくるのを待っていると、数秒後に目の前のドアが開いた。