不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「ああ、誤解をさせては悪いから言い直すが……表向きは円満な夫婦と見られたほうが、お互いのためだという意味だ」
弾んでいた心臓にちくりと針が刺さり、ゆっくりと空気が抜け萎んでいく。
続いた千晶さんの言葉は、ほんわかと温かくなっていた私の心を一気に冷やしてしまった。
「あぁ、なるほど! そう、ですよね……」
揺れ動く気持ちの変化を見抜かれないように、努めて明るく取り繕う。
誤魔化すようにタルトにフォークを入れると、フルーツの下のタルト生地がボロボロと崩れて散らばった。
私は、一体どんな言葉を望んでいたのだろう……?
そう思いを巡らせた時、欲しかった言葉に気付かされる。
夫婦らしい時間をもっと作ったほうがいいなんて言われて、単純に嬉しかった。
許婚なんていう形で始まった関係だけど、もしかしたら千晶さんの気持ちに何か変化があったのかもしれない。そんなことを一瞬でも思ってしまった。
だけど、それは私の都合のいい思い違いだった。
あくまで表面上。
夫婦と見えるようにと言われたことが、少なからずショックだった。
でも……どうして、それがショックだなんて感じてしまったの……?
プレートの上で散らばったタルトの生地をフォークで集めながら、自分でもよくわからない感情の起伏に戸惑っていた。