自由に羽ばたくキミが
「私のあの姿をママは怒って、パパは喜んで。
パパみたいな事するなってママは言うのに、ママにそっくりだってパパは嬉しそうに笑うんだから」


「一番言えるのは、お前の《親父》はお前が何してもさすが俺の娘だって言い切る事だな」


「はは…ねー」


タバコを吸い切ったところで、気になったのかコンビニでタピオカを買っていた咲名。


クレープは食べたがるくせに甘い!と一口飲んで照樹に押し付けるところまで、レジで出した時からなんとなく想像はしていた事。


やっぱりアイスコーヒーだわ、と飲みかけの缶コーヒーを取られたのは想定外ではあったけれど。


こんな姿を見て、昔通りに戻ったとまでは言わないけど。


人が変わってしまった数年前よりは自然体になれたんだなって。


もしかしたらこれがこいつの本当の姿かもなって。


少し大人びて見える妹のように可愛い咲名を、結局は甘やかし尽くしてしまう照樹。


「私はどういう立ち位置で過ごすか決まってる?」


車に乗り込んで、さぁようやく事務所だと言えば気にするのはそんなところ。


「社長令嬢は嫌だろ?社長も嫌がったら隠せってよ」


「んー…じゃあ照にぃの友達は?翼の妹の友達とか」


「なるほど、妹がいるとこは知られてるから…けどコネ入社とかって言われかねない」


「スカウト売りにしてんじゃん」


「確かに、名前は?」


「久利生咲名、ばぁちゃんの旧姓で行く」


「留学してたとか言うか?」


「ん、まぁそこまで私に踏み込んでくる人いないと思うし」


いやきっと大騒ぎだぞ、とは言わない。


そうか?と誤魔化すので精一杯ではあった。


「ハーフってのも黙ってる、聞かれるまで」


和と洋、和が少し強めに上手いこと交わってる。
この目鼻立ちは昔から女の僻みの対象だったという自覚はあるからなるべく目立ちたくはない。


生まれつき美人はだいたい学生時代にウンザリするほどチヤホヤされるから、自らされたがる美人なんて本当は存在しない、謙遜とかではなくて自己防衛。
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