つまり、会いたいんです。
榛瑠は優しい、けれどはっきりした声で続けて言った。

「その屋敷から出ないでね、お嬢様。あなたがそこで守られているから、こうしてこちらも安心して毎日過ごせていることを決して忘れないで下さい。私だけではなく、父親である社長もね」

「わかってる。ちゃんと家にこもってる。それに結構、元気なんだよ?(つき)ちゃんもいるし。ちょっと、うん、弱音が出ちゃったけど」

榛瑠はその答えを聞いた後、グラスの酒を飲み干した。
「もう飲んじゃダメ。飲み過ぎ」
「意外と、うるさいですね」
「だって見てるだけだと心配が増すんだもん、って今わかったけど。言うこと聞きなさい」
「心配ねえ」

榛瑠が鼻で笑ったように感じた。
何よ、私だっていつも心配されているばっかりじゃなくて、心配したっていいじゃない。

そう言い返そうとして、その前に言葉をかけられた。
「もう寝なさい、遅いから。切るよ」
「え、やだ」
「ダメ、終わり」
「もうちょっとだけ。五分でいいから」
だって、次いつ話してくれるかわかんないじゃない。

「……しょうがないな。わかった。じゃあ、あかり消してベットに入って」
えーと思ったけど、言うことを聞いてベットの中に入る。

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