つまり、会いたいんです。
リビングの戸を開けると、美味しそうな匂いがした。

ダイニングテーブルの上には白い皿や綺麗に光ったカテトラリーやグラスが既に並べてあった。

「なんだか本格的。おいしそうな匂いする!何だかすごくない?」

「まねごと程度だけどね」
そう榛瑠は言うと、両腕を広げた。

「それより、はい」

「え、何?」
「私はちゃんとあなたを待ちましたよ。だから、はい」

そう言って腕を広げたままにっこり笑う。

「うう……」

一花は小さく呻いてしまった。

嬉しいんだよ、嬉しいし、すぐにでも腕の中に飛びこみたい、というか、そうしたいってずっと思って過ごしてきたのに、何、この恥ずかしさ。すごいドキドキしてるんだけど。

そう思いながら上目使いで相手を見ると相変わらずにこにこしている。

一花は下を向いたまま、のそのそと榛瑠に近づくとその胸にとん、っと頭を預けた。

「それだけ?」

頭の上から楽しそうな声が降ってくる。

絶対、面白がってる。

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