つまり、会いたいんです。
「変わらず愛してるよ」

声が体の中に綺麗な音をたてて落ちる。

榛瑠が、付け加えて言う。
「困ったお嬢様ですけどね」

「そんなの!」一花はちょっと悔しくなって、榛瑠から体を離す。

「私のほうが困ってる。すごい会いたかったんだから。私なんか変わらないどころか、前よりずっと好きなんだから!」
最後はまた涙声になる。

榛瑠がため息つくと、跪いたまま一花の膝に頭を埋めるように体を丸めた。

「え?榛瑠?」

「…まったく…。人がそれでも久しぶりだしガキじゃないんだし、紳士的に振る舞おうとしている端から、あなたは…。煽るなよ」

「え、なに?」
よく聞こえなかったんだけど。

「なんでもありません」
榛瑠は一花の手にキスをすると立ち上がった。
「さ、鴨をなんとかしないとね。…でも、よかった」

「なにが?」

「心配してたんです。最初の頃はぐずぐず言ってたのに、自粛が長引くにつれて、大丈夫だよって言うようになってたから。ちょっとヤバイかなって」

「そうだったっけ?」
自覚ないなあ。

「うん。だから慰める機会がもててよかった」

一花の頭にぽんっと優しく手を置くと、榛瑠はオープンキッチンに向かった。

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