オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~

なんの話かと手もとから琴乃に目線を移す。


「恋人ですもん、一緒に行きますよね。そうなったら寂しいなぁ」


琴乃が勝手に話を進めていく。美紅はそれについていけず、ただ彼女を見つめていた。

一慶がイタリアに帰る……?

そんな話は聞いていないものの、いつかそんな日がくるのは予想していた。彼の拠点は今も向こうだ。
日本へは直営店をオープンさせるためにやって来たのであって、永久的に住もうと考えてはいないだろう。

雑誌に書かれた内容を美紅に話さないのは、自分ひとりだけの問題だと思っているため。つまり、美紅を連れていく気はない。
離れ離れでもいいのか、それとも日本にいる間だけの関係なのか、どちらにせよ美紅は蚊帳の外なのだ。

いったん悪いほうへ考えると、坂道を下るように暗転していく。


「それじゃ、私はそろそろ帰りますね」


琴乃にそう言われて、もうそんな時間なのだと知る。


「あ、うん。今日もありがとう」
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