オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
美紅はバーベキューの食材が入ったクーラーボックスを肩にかけてキッチンに向かった。
ピーマンにナス、カボチャなどの野菜を切っていると、晴臣がやって来る。
「一慶とケンカでもした?」
ギクッとした美紅は包丁の手を一瞬だけ止めたが、すぐにトントントンと小気味のいい音を立てる。
「べつにしてないよ」
「そう? 昔は仲良くじゃれ合っていたのに今日はひと言も話してないじゃないか」
いったいいくつのときの話だろうか。そもそも美紅にはじゃれ合った記憶はない。
いつも一慶にからかわれ、おもちゃ同然にされていたではないか。
それなのに好きになるのを止められなかったのは、一慶がふとしたときに見せる優しさのせいだ。意地悪を言うくせに、いざというときに優しいから。
美紅は、そのアメとムチに翻弄されてきたのだ。
「気のせいだと思う」
「一緒に暮らしはじめたんだって?」
「うん。おねえちゃんが幸司さんと結婚するから。うちの親が未だに私のひとり暮らしに反対なの」