戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
ローテーブルの上で頬杖をつき、口角を上げている目の前の彼は、会社で見る彼とは違う素顔。
茫然と立ち尽くす私を見上げる村雨くんは、まるでイタズラが成功した少年のように微笑みを浮かべている。
「え、ちょっと待って…なんでここに村雨くんが?今日は私、神田商事の御子息と」
「見合い、だろ?…落ち着けよ。ほら、ここ座って」
村雨くんの前席に座れと言われ、プチパニック状態の私はそれを素直に受け入れた。
座椅子の上に座り、一呼吸おいて顔をあげると、バッチリとイケメン村雨くんと目が合ってしまった。
ああ…何度見ても慣れないなぁ、キラキラした村雨くんは。
しかも、老舗料亭という場であるもののプライベートだからか、カジュアルスーツに身を包んでいて、より一層オシャレさが際立っている。
「今日、アンタの見合い相手である神田商事のご子息ってのは、俺のことだよ」
「えっ?」
テーブルの上に準備されていたおしぼりで掌を拭っていると、予想もつかなかった事実を聞かされて動きが止まった。
「村雨くんが、神田商事のご子息?」
「ああ」
にわかに信じがたい事実。
でも、村雨くんがこんな笑えない冗談を言う人間ではないことも知っているし、何より、私を見つめる村雨くんの瞳があまりにも真剣で、嘘じゃないってことは直感でわかった。
「でも、名前が…」
「本名は、神田 律。村雨は母方の旧姓で、会社では素性がバレると面倒だから隠してんだよ」
「そ、そうだったの…」
まさか、あのダサいことで社内イチ有名な村雨くんが、芸能人顔負けの男前で、由緒ある大企業のご子息だったなんて…。
こんな立て続けに村雨くんの素顔を知って、私はどうしたら良いの?