戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
「結婚はできなくても、婚約はできるだろ」
「は?」
「ま、正式な形で結婚するのが最善だろうが、内縁関係でも悪くない」
ちょっと待って。
村雨くんが言っている意味が、全く理解できないんですが。
「彩葉」
怪訝な顔をできたのも一瞬、私は伸びてきた村雨くんの両腕に容易に捕まり、顎を固定され、強引に至近距離で見つめ合う。
「どんな形でも、俺はアンタを離さない。既婚になりたいわけじゃないんでね。アンタを俺のそばに置いておく一番の口実が結婚だっただけだ。アンタが結婚を拒んでも、婚約者…いや、内縁の妻としてでも俺の傍にいてもらう」
「な…っ」
「でも、婚約までして結婚しないとなると、世間様はなんて言うかな」
「ひ、卑怯…ん!」
初めて奪われた唇。
まるで、私の反論は聞かないとでも言いたげな荒々しい口づけ。
嘘でしょ…久しぶりの口づけなのに、ロマンのカケラもない。しかも、この人、キスが上手すぎる。
「っ…はぁっ」
「もうギブアップ?俺、全然足りないんだけど」
息も耐え耐えな私とは反対に、村雨くんはケロッとしている。
今すぐにでも距離を置きたくて、彼の腕の中でもがくものの、力量では全く歯が立たず、さらに村雨くんに強く抱きしめられるだけだった。
「3ヶ月」
「え?」
「3ヶ月は、結婚するの待ってあげる」
急に何を言い出すの?
見上げた先の至近距離にいる村雨くんは、天使のような微笑みで私を見下ろしている。
しかし、誰もが見惚れそうな微笑みをたたえた村雨くんは、私には悪魔のようにしか見えない。
「な、何を考えてるの?」
「ひどいな。彩葉の気持ちが追いつかないまま結婚しても、彩葉がマリッジブルーになりかねないと思って融通したのに」
マリッジブルー…ね。
すでに村雨ブルーなんだけど。
そんな笑えない冗談を言いそうになったが、我慢して堪えた。