消えた卒業式とヒーローの叫び
「うわー最高だったっすね! 話題になるのも頷ける」
「わかる。動きも凄く綺麗だった」
立ち上がってうんと伸びをする吉岡くんに、大賀くんが答えた。隣に座る上原くんのことなど気にも留めないように、二人は飲み物や鞄を整理する。
日彩も慌てて荷物を片付けた。
ぞろぞろと立ち上がる人々の口からは、「凄かったね」とか「面白かった」などと、ありふれた感想が漏れ出している。
その中で、彼らの会話だけは異色を放っていた。
「あそこで足元を映してるのが良くね? 水たまりに顔が映っててさ」
「そうだな。観客に想像させる形とか、やっぱりもう少し視点を増やすことも大事だな」
作り手となると、やはり着眼点が違うのだろう。
かくいう私もそうだ。純粋に作品を楽しむ気持ちもあるが、どこかに伏線があるのではないか、ここの映し方はいいな、などと無意識に考えてしまっている。
日彩以外のここにいる人たちは、きっと同じ感覚を持ち合わせているのかもしれない。
シンデレラの魔法が溶けたような余韻に浸りつつ、ようやく立ち上がった上原くんと共に、私たちは映画館を後にした。